『つきあい方の科学』
『学び合い』に通じる人とのつきあい方について書かれた1冊。囚人のジレンマのゲームを用いた実際のデータや分析をもとに、人とのつきあい方を書いてくれています。
日常の人間関係を捉えるユニークな視点。生物界に見られる多くの「つきあい」には、いろいろな利害対立がある。そのなかで「協調か裏切りか」というジレンマ状況を、ゲーム理論でとりいれた進化生物学の視点から解く。
最も優秀な結果を残したプログラム
囚人のジレンマを用いたゲーム大会において最も優秀な成績を残したのは、最もシンプルなプログラムであった。「しっぺ返し」を行うというプログラムである。
まず囚人のジレンマのゲームとは何なのか。
1、AとBがお互い協調を選択すれば両者に3点
2、Aが裏切り、Bが協調を選択すればAに5点でBに1点。(逆も同じ)
3、両者ともに裏切れば両者ともに1点
非常にシンプルなゲームで、「しっぺ返し」は一つ前に相手が選んだものと同じものを選択するというプログラムである。様々なプログラムの中でこの「しっぺ返し」が最も優秀な結果を残した。つまり人間関係においてもこの「しっぺ返し」の付き合いが最も優秀であると考えれる。
期間が決まっているかどうかで結果は変わる。
ただし、あと何回で終わるということが分かっているゲームにおいてはしっぺ返しが必ずしも有効に働くとは限らない。最後に裏切ればいいという考えが生まれるからである。いつ終わるか分からない状況においては、戦闘中であってもお互いに攻撃し合わないという状況がうまれたり、小さな生物が大きな生物に寄生して生きていくといった状況も生まれる。
しかし、人間関係においては基本的にいつ終わるかは分からない。例えば学校生活において1年でクラスは変わってしまうが、つきあいは終わるわけではない。ということは、人間関係において裏切りを選択するのは不利になる。
『学び合い』における得
よく『学び合い』では徳ではなく、得を語る必要があると言われます。
・人に優しくしましょう、みんなと仲良くしましょう。→「徳」
人は徳だけでは行動が続いていきません。得がないと人は動くことが出来ません。
・戦争中のお互いに殺しあわない関係、アメリカ議会における議案の採決、商談など→「得」
人間関係においていいやつと思われることでこういった「得」を得ることが出来ます
計算高くやるというわけではなく、人として上品にふるまうことが結果として長期的に安定した人間関係を築くことができる。いいやつだと思われることが長期的に得をするというデータがある。裏切られた時は一度のみ裏切りそれ以上は追求しないということも結果として得になる。大きく儲けようとしたり、最初に裏切る姿勢でいることは結果として損をするということをデータは示してくれている。
『学び合い』で得を語る時の根拠になる1冊になりました。
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