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教職大学院進学を考えている人へ

 教職大学院に入学して1年半が経過しました。あらためて来て良かったと思うことを振り返りながらお勧めすべき点を説明したいと思います。

教職大学院の魅力。

 私が院に来て1番良かったと思うこと自分のやりたいことを考える時間が取れるということです。現職として働いている時は仕事がどんどんやってきてそれを一つずつやっつけていきようやく自分の時間を作るという感じでした。こう書くとめちゃくちゃ大変な感じかもしれませんが、そんなことはなくかなり楽しく働いていました。仕事をこなす能力は成長している実感はありましたが「なぜ教育をするのか」「なぜ学校は存在するのか」といった問いを考えたことはあまりありませんでした。大学院では「なぜ」をじっくりと考えることが出来ます。私が読んだ「なぜ」を解決するための本を紹介したいと思います。

お勧めの書籍

『状況に埋め込まれた学習―正統的周辺参加 』 ジーン レイヴ 

 タイトルを見た瞬間に難しそうだと思った人もいるかしれません。正直かなり読みごたえがあります。ただ読むだけの価値はある1冊だと思います。正統的周辺参加とは人が学ぶ方法は学校に座って一方的に教え込まれるのは自然ではないということを教えてくれます。洋服の仕立て屋さんが弟子に洋服の作り方を教える際にどのように教えていくか。糸について、針について、布についてなんてことを教えていくことはありません。最後の仕上げである袖のボタン付けを弟子にやらせるのです。ボタン付けの作業は全体の工程をしっかり見ることが必要であり、さらに失敗しても修復可能な作業なのです。弟子はボタン付けという作業に必須な工程でなおかつ安全に失敗できる場所で作業することで学んでいき職人になる。「学び」とはそうやって昔から行われている行為なのであるということです。

 

「学ぶ」ということの意味 佐伯胖

 アメリカで実際に行われた「教えない授業」が書かれています。子どもたちが自分たちで数学の教科書を作っていく授業の様子が書かれていて面白く読むことができるのと同時に「学ぶ」とは何なのか?主体的な学びって何なのか?自分の授業の主語が本当に子どもになっていたのかを考えさせられます。後半に登場する学びのドーナッツ論では人が学ぶには人との関りが必須でありどのように関わっていくか。学んでいく中で果たして「今の学び方は正しいのか」と疑えるかどうかが大切だと書かれています。学習指導要領にも出てくる学び方を学ぶということについても学ぶことが出来る1冊です。

『23分間の奇跡 』 ジェームズ・クラベル

 この本はさきほどまでの二冊とは違い、短編小説です。ある日、教室に新しい先生が来て子どもたちに教育をしていく。最初は新しい先生の言うことを疑っていたのに知らない間に子どもたちが誘導されていく。読み終わった後に自分が正しいと思っている方向に子どもたちを強制的に導こうとしていないか。子どもが自分で選択していく力を身に付けることが出来ているのか。教育の力について真剣に向き合わなければと思わせてくれる非常に短いですが心に残る1冊です。

次回以降も参考になった本を紹介していきたいと思います。